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2006年11月10日

【灰色の記憶シリーズ】 キス

【灰色の記憶シリーズ】は、「オトコの女々しさ」を綴る創作コーナーです。
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「キスしてもいい?」


そう僕が問いかけると、彼女はそっとうなずいた。
道頓堀の薄暗いベンチで、ふたりは唇を重ねた。



その夜のこと、彼女は覚えているだろうか。



待ち合わせ場所で、お互いを見つけたふたりは笑顔で手を振り合った。
「おいしいワインでも飲みに行かない?」と僕がいつもの調子で言うと、
「うん。行く」と彼女はいつもの笑顔で答えた。


店に入るとグリコのネオンが見える窓際の席に通された。そして、甘口の白
ワインが好きな彼女のために、ドイツワインのフルボトルを開けた。


「乾杯」


グラスを重ねる音が、静かな店内に響く。
しばらく他愛のない話をしたあと、僕は切り出した。


「今夜はどんな気持ちでここに来たの?」
「え…」 彼女は一度口ごもったけれど、勇気を振り絞るように口を開いた。
「この前電話で話したこと、ちゃんと逢って話さなくちゃって思ったから」
「オレがどんな想いを伝えても、今こうしていつものように逢っていても、
気持ちは変わらないのかな」
「うん…」
「そうか…」


僕は窓の外を見つめた。グリコのネオンが手を広げて笑っている。


「もう一度ゼロからやり直してみない?」


彼女は黙ったまま左手に持ったワイングラスを見つめていた。
その沈黙こそが、彼女の答えだった。彼女の頬をつたう涙を、僕は見ないふりをした。


「終電まで少し時間があるよ。外を歩こうか」
「そうね…」


初めてのデートも道頓堀だった。あの夜、僕が彼女の手をつかむと、彼女も握り返してきた。今夜も、僕は彼女の手をつかんだ。


「どうして道頓堀の水は濁ってるか知ってる?」
「ううん。知らない」
「みんなが捨てていく悲しい思い出を隠すためだよ…」
「またそんなこと言って…」 彼女はクスっと笑った。少し悲しげな顔をして。


しばらく歩いてから、ふたりはベンチに座った。
僕は、初めてそうした時と同じように、彼女の髪を優しくなでた。


「キスしてもいい?」


そう僕が問いかけると、彼女はそっとうなづいた。
道頓堀の薄暗いベンチで、ふたりは唇を重ねた。


誰も、それが最後のキスだとは思わなかっただろう。


「今までありがとう。オレは世界一幸せだった。ありきたりだけど、絶対幸せになれよ」
「うん。こんなあたしを好きになってくれてありがとう。あたし、あほやね…。あなたの愛忘れないよ」



これが、ふたりのラストシーン…。



★さよならに向かって走る御堂筋
★なぜ泣くの君が終わりを告げたのに
★この胸で泣けとグリコが手を広げ
posted by ラリオス at 19:00| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 灰色の記憶 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月20日

【灰色の記憶シリーズ】 恋

【灰色の記憶シリーズ】は、「オトコの女々しさ」を綴る創作コーナーです。
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現在進行形なのに
すでに結論が出ている
恋にはよくあることだ

自分の中でも周囲から見ても
結論は明らかなのに
別の角度から検証してみたくなる
それが恋

どんな実験をしても
同じ結論しか導かないのに
何度も繰り返す
恋とはやっかいなものだ

そしてキスをしたからといって
実らないのも
また恋である

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posted by ラリオス at 09:32| 東京 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 灰色の記憶 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月10日

【灰色の記憶シリーズ】 雨

【灰色の記憶シリーズ】は、「オトコの女々しさ」を綴る創作コーナーです。
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そう。あの時も雨だった。
外は雨だというのに、訳もなく出かけたふたりは、押し黙ったまま歩いていた。

「あ、金木犀の香り…」
僕の傘の中で、瞳をキラキラさせて彼女が言う。
「うん。いい香りだ」
僕は目をつぶって答えた。

それは、彼女が放っているかのように感じられた。そして、肩を濡らす雨さえも、まるでフレグランスのように香り、「愛しい」という言葉がピッタリだった。


肩寄せる 金木犀に香る雨


そして、今夜も雨だった。
川沿いの道を歩くふたりは、あの時と同じように押し黙っていた。しばらくすると、JR線の橋の袂にさしかかった。

川面に映る街の灯が、うっすらと彼女の表情を浮きあがらせていた。
彼女と目が合う。
川面が揺れているせいだろうか。彼女の瞳もユラユラと揺れていた。

沈黙を破ったのは、橋の上を通る貨物列車だった。
轟音に紛れて、僕たちはキスをした。
長い長い貨物列車が通り過ぎるまでずっと…。

街の灯は変わらず川面を照らしている。けれど、時とともに水は流れていた。

ゆっくりと唇を離すと、悲しみの味がした。

開いたまま転がっていた傘を渡して、僕はひとり歩き出した…。


この雨もいつしか海に流れ着く



【灰色の記憶シリーズ】

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posted by ラリオス at 21:06| 東京 ☁| Comment(6) | TrackBack(0) | 灰色の記憶 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月18日

RINA (NANAのパクリじゃないです!)

恋人でも友達でもないRINA
僕のバースデイにスマイルの灰皿をくれたRINA

「B型同士気が合うね!」とグラスとグラスで口づけたRINA
時を惜しんでいつまでも語りあったRINA

いつもカラカラと笑っていたRINA
「心が風邪を引いてしまったの…」と、どこかへ行ってしまったRINA

スマイルの灰皿にタバコの火を押し付ける
いともたやすく炎は消えた

RINA………

2005 918 1558.jpg

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posted by ラリオス at 18:09| 東京 ☀| Comment(4) | TrackBack(0) | 灰色の記憶 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月12日

僕は女々しい男です

どうしてもっと遠くに引越さなかったのだろう。

二人で暮らした家の横を通り過ぎる。
少し遠回りして…。

彼女は料理上手だった。仕事の帰り道、家のそばまで来ると、
いつもおいしそうな香りがした。
それは彼女のものであり、僕のものだった。

「アパートの二階からするわけないよ」と、彼女は信じなかったけど、
そんなお決まりの会話が楽しみでもあった。

真っ暗な部屋の窓を見上げながら、
二人で暮らした家の横を通り過ぎる。
少し遠回りして…。

おいしそうな香りはどこからもしない。あの香りは間違いなく、
彼女のものであり、僕のものだった。

目の前が霞んでも、僕は立ち止まらない。
振り返っても何も見えやしないのだから…。

二人で暮らした家の横を通り過ぎる。
少し遠回りして…。

秋を知らせる風が、すぅーっと頬をかすめた。
posted by ラリオス at 23:29| 東京 ☀| Comment(11) | TrackBack(1) | 灰色の記憶 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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■HP:http://www.willing1101.com/freewill/home.html

 

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